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2013.04.21 (Sun)

本日サービスデー1~6

1.

 その日の朝も、いつものように大好きな東方神起のstillの、「君の声が聞けないなんて~愛してると言えないなんて~」のアラームで目が覚めた。いつものように、繰り返して聞いて、何回でも言ってくれればいいのにとバカな事を考えながら横を見ると、最近すっかり老人化した旦那はすでに起きたのか、そこにはいなかった。
が、階下から、ボケた義母と半分切れかけた口調で話している旦那の声が聞こえてくる。
「何を寝ぼけた事を言ってるんや!何回もおんなじこと聞いて!ボケたんとちゃうか!?」と
ボケてんのはあんたじゃないの?と突っ込みたくなる台詞をはいている。
何回繰り返せば学習するんだろう。とっくにボケてるんだってば。そうやって、刺激したって一度しわの伸びちゃった能には二度としわは出来ないって事を。
 やれやれ…と憂鬱に思いながらも、まぁ仕方がない、これが現実だ。と気持ちを切り替えて、東方神起のポスターが大量に貼られた夢の部屋から、ボケた義母と、4人の姉の後に願かけて産んだ可愛い一人息子の旦那が腹減った~と待つ現実よりも厳しい現実の部屋へと向かう。
 ここ何年と繰り返された普通の朝だ。ただいつもと違ったのは北向きの寒くて暗い台所(そう、キッチンと呼ぶにはあまりに暗くて汚れた場所)に明るい一筋の光がどこからともなく差し込んでいた事だ。
 普段から物事を深く考える事のない私は、どこから入った光だろ?とチラッとは思ったものの、口を開けてピーチクパーチクうるさい年おいた小鳥たちのえさを作る事に気をとられ、すぐにその光の事は気にならなくなった。
 まさかその光が、私の人生をとんでもなく素晴らしいものにしてくれる光だなんて事はこれっぽちも思いもしなかった。これっぽちがどれぽっちだかもよくわからないが。
 いつものように朝食を作りながら、洗濯をし、お弁当を作り、私は暗くて寒い台所で立ったまま朝食を食べた…といっても私の朝食はお弁当のおかずの残りものだが。
 そして義母は、「いいから、いいから、おいとき。わたしが家におるんやから、わたしが洗っておくから」と言いながら、すっと、ごちそう様でした。とお盆に乗せた茶碗の山を押し出す。やる気ないんなら、最初からごちそう様だけでいいでしょうよ!洗濯物も「干すから干すから。おいとき」と言いながら「洗濯機止まったよ~」と呼ぶ。
どっちやねん!!と一度でいいから、言い返してみたい。
 そんな毎日繰り返される日常を後にして、戦場へと向かう。そうだ。これまたいつものように満員電車との戦いだ。いつものように、前から3両目の駅売店前辺りの停車位置に並ぶ。見慣れたメンバーが並んでいる。いつも一番前にいる神経質そうなおじさん、証券会社が立ち並ぶあの駅で降りるからきっと証券マンなんだろう。あの指で何やらサイン出す、あんな事もしてるんだろうか?グチグチ部下のミスをせめてそうな顔だな。あの学生も、あのおしゃれな女の子も。どうして、みないつも同じ電車の同じ位置から乗るんだろう?私もだけど。
 その頃家の台所では例の一筋の光をボケたばあちゃんが見つけて、「まぁ綺麗だね~あみさんどこからこんな光さす蛍光灯買ってきたんだろうね~。ありゃま、光の中に文字が見えるよ。 は? ”おめでとう!あみさん本日あなたはサービスデー” どこのスーパーが安いんだい?卵は98円かね~?あみさん!!あみさん!!!たまごが安いってよー!!もう仕事行ったかいな?」
 次は淡路~次は淡路~ あ~もうやだ~半分くらい降りればいいのに!!! ドドドド…… あれ?あれ?何?今日はどうしたっての?半分くらいに減ったよ~~!!!ラッキー!!ちょうどまえの席の人も降りた!座れるぅ~。
あー久しぶりに淡路から座れるなんて、ほんと今日はいい日だ。宝くじ買えば当たるんじゃないの~?なんていつも思うけど、当たったためしがないな。あんなの当たったらろくな事ない!ってばあちゃん言ってたけど、当たった事もないのに、なんで分かるんだか。当たってから言って欲しいわ。
 目の前に立ったお嬢さん可愛いのに、髪ぼさぼさだわ。でもお化粧する時間だけは死守したのね。なんだかカバンの中から書類落ちそうだし、大事そうな書類落しちゃったら、上司に怒られるんだろうなー。それを届けてすごいお礼を頂く。なんてそんな小説みたいなことは起こらないよね。お嬢さんプレゼンの準備で徹夜だったのかしらね。
膝がくがくして、寝てるわ。
十三~十三~~ ギャー降ります!!!!!!! 慌てて出口の方に向かったお嬢さん。カバンからあふれ出た大事そうな書類を、ポトリと小説のように私の膝の上に落として、降りて行った。
 ありゃりゃ…ほんとに落として行ったよ。困ったな。私だって仕事行かなきゃなんないのに。そう思いながら書類袋の会社名を見た。
 なんですって!!!!avex!!!!!見間違いじゃないよね?何度も確認する。[avex] 私の知ってるavexとは違うavex?いや、ロゴもa-netionで見るのと同じだ。住所…本社の住所見たってわかんないけど、前に心斎橋行った時に見たな。うん、合ってる。間違いない。誰に届ければいいかわからないけど、行かねばなるまい。行かずしてなんとなる。こんな機会は二度とない。もしかしたら、ユノがいるかもしれない。大阪の事務所にいるわけないけど…
そうだ!大変な事忘れてた!!!今日まだ大阪でコンサートじゃんかぁ~!自分がチケット当たらなかったからって、頭の中から消してたよ。と言う事はユノはまだ大阪にいるじゃないの!頭の中がすでにユノでいっぱいだ。
「もしもし、社長ですか?すみません。電車の中でおばあさんが倒れて、今救急車に付き添ってますんで。はい、そうですか?はい、家族の方が来られたらすぐに行きますんで」
 よし!!!いざ愛するユノの元へ。

2、


 たしかアメリカ村の中にエイベックスの大阪事務所あったはず… あれ事務所じゃなかったかな…
ま、いっか。行ってみよ。いつものように適当に何の考えもなしに勢いだけで行動する。
心斎橋~~心斎橋~   ♪こぬか雨降る御堂筋~~♪ 
アメリカ村は若者の街だから、こんなに早い時間だとお店は全然開いてないんだなぁ。
6月のまだ暑くない晴れた日の朝は、とても爽やかだ。
あ~まるでユノのようだわ。 と何でもユノと結びつけて楽しむのは、嫌な事から気持ちを変えるために覚えたおばさんの裏ワザだ。
 若者が繰り出す時間にはアイスドッグの店や甲賀流のたこ焼きの店も開いてるんだけどなぁ。と何しに来たのかすでに忘れかけて、若者の街へ迷い込んだ私はキョロキョロと辺りを見渡した。
 何気に通り過ぎたけど、御堂筋って大阪万博の時に作ったんだよね…こんな広い道路作ろうと思った人すごいな。この辺りの土地持ってた人って今頃どんなリッチな生活送ってんだろう…いや、案外ろくでもない詐欺師に引っかかって、一文無しになってたりして。ヒッヒッヒ   って何の話だ?
 あ、これこれ、このおしゃれな街灯は誰の作品だろ?京都のロッカーの桜の模様にも驚いたけど、この街灯にも初めて見た時びっくりしたなぁ。うちの駅から続く暗い道にもこんなおしゃれな街灯つけてくれればいいのに。一人ブツブツとつぶやきながら歩く私はふと視線にきづいた。
 なんか、さっきからすれ違う人が、私見て軽く会釈して行く気がするんだけどな。私の自意識過剰もここまできた?
 駅の売店でアメちゃん買ったら、フリスキーもどうぞ!ってしかもユノのシール貼ってるし、なんでトンペンってわかったんだろ?ビギストのキーホルダー見えたのかな。おばさんが今日の1日が良い日でありますように。って、近頃の売店のおばさん、そんな事言わなきゃいけなくなったのかねー。売り子さんも大変だ。
 ありゃま、へんな事ばっかり考えてたら通り過ぎて、三角公園まで来ちゃったよ。やっぱりアイスドッグもたこやきも開いてないか…    開いてたら食べるのかよ!!
 一人で突っ込むのは虚しいなぁ。誰か突っ込んでくれないかなぁ。
すると、後ろから「残念ながら、開いてませんね。甲賀流」え~~~~~???聞こえたの?心の声。
 私の方は見ずに、甲賀流のたこ焼き屋のある方をじっと見つめて、つぶやいたのはスーツを着た男性だった。
「開いてたら、買ったんですか?」逆に突っ込んでみる。
「るるぶ大阪に載ってたので、是非食べてみたかったんですが、残念ながら新幹線の時間が…」大阪の突っ込みには慣れていないようだ。
「夜は遅くまで開いていたはずですよ」誰とでも普通に話せるという得意技を持つ私は、まるで知り合いに言うように答えた。
「夜も会議が長引いて…」よっぽど食べたかったのだろう、かなり悔しそうだ。
残念そうな男性を見かねて、お節介な私は「新幹線でおかえりですか?」と聞いてみた。
「はい、そうです」「じゃぁ新大阪駅にくくるのたこ焼き屋さんがあったと思いますよ。くくるのたこやきもとっても美味しいですよ~。私は甲賀流よりもくくるの方が好きですね!!」といらない情報まで押し付けてみた。「そうなんですか??いやーありがとうございます!!」予想外に良い反応だ。
「お礼と言ってはなんですがこれ良かったら」と、とんがった靴に三つボタンのスーツをおしゃれに着こなした男性が、胸の内ポケットから取り出したのは、大手ファミリーレストランの株主優待券だった。
「今取引先から大量にもらったとこだったんで、どうぞ。では 今日1日が良い日でありますように」
出た!またそのフレーズだ! 朝ズバ!とかズームインとかで本日のラッキーワードにでもなってんのかな?
 分厚い優待券を握りしめながら「笑い取りたかったら、”おもしろい恋人たち”のお土産も忘れずにね~」と手を振った。爽やかな男性は親指を立てて、ユノがいつもする素敵なポーズをとった。
 すでに男性は遠くに離れていたので、顔をユノに取り換えて、ユノが私に素敵なポーズをとった。8:45と脳にインプットした。
 ユノがくくるのたこ焼き食べて、おもしろい恋人たちを買う姿を想像すると、なぜか朝からとても幸せな気持ちになった。こんな事で幸せ感じられるなんて、ほんと安上がりな性格だわ。
 ようやく本来の目的を思いだした私は、スキップしながら(実際には出来ていないが)進んだ。
方向音痴の私が事務所を見つけることは奇跡に近いと思っていたが、今日はなぜかそんなに時間もかからずに(いつもよりは)エイベックスの事務所だと思われる所を見つけた。
 事務所でありますように!祈る気持ちで自動扉を開けると、そこはもうすでに芸能界だった


3、

 すごい、大阪の事務所ですらこれなの?右にはアユ左にはくーちゃん正面には我らが東方神起の男前二人
実物大のパネルやら、ポスターがいたるところに… 私の部屋よりもすごいわ。
「おはようございまーす」 …… かわいい お人形さんみたい。さすがにエイベックスの受付ともなると
大阪でもこれだけのかわいこちゃん。
「かわいいね~。芸能人?」と思わず聞いてしまうほどだ。
「ありがとうございます。歌手目指してたんですけど、可愛いだけでは駄目だって気づいて、社員になったんです。早く気付けて良かったと思ってます」顔が可愛いだけではなく、愛想もよい。
「そうよねー。やっぱり芸能界は厳しい所だもんね。地道に会社で働いて男の人にそれなりにチヤホヤされて、受付座ってどこかの若手の社長さんに見初められて、玉の輿。って言うのも幸せかもね」
「そうなんです。ここに座ってるといろんな方に声かけていただいて、結構気に入ってます」
「いいわね~可愛いと。ほんと女の人生生まれた時から決まってるんだねー。うらやましいわ」
…  っていけないけない。受付のカウンターに片肘ついて、世間話しに心斎橋までやってきたわけじゃないのよ。
「あのね、この書類袋今朝電車の中で、可愛くてお化粧はばっちりだけど、ブローしてる暇のなかった、おたくの社員らしき女性が、私の膝の上に落として気づかないで電車降りていっちゃたのよ。それでね、私優しいからわざわざ遠回りして、ここまで持ってきてあげたのよ。だから持ち主さんは私の事覚えてないと思うけどよろしく言っておいてね」と書類袋を渡し帰ろうとした。
「すみません!しばらくお待ちください!そんな大切な方をこのままお返ししたら、大魔王に怒られます」と半泣きで叫ぶ。
「大魔王?」「あ…社長です」ちらりと見せた憎しみを含んだ表情が気になるところだ。
「そうね、奴は確かに大魔王よね」「え??おば様社長をご存じで?」憎しみの表情が一変した。
「直接は知らないけど、私はチャンミンの件から奴を許した日はない!!!」握り拳で空を殴る!
おばさま~~~~  受付のカウンター越しに人形のように可愛い娘さんが抱き付いてきた。ストロベリーの甘い香りに思わずよだれが出そうになった。女の私でさえ、一瞬ムラっとしたのだから、これがもし旦那だったら、一瞬にして野獣化しただろうな。フフフ…ザマーミロ。訳の分からない満足感だ。
 「おばさま、蘭子嬉しい。チャミペンさんでいらっしゃるのね?」「蘭子ちゃん私はトンペンよ!蘭子ちゃんもなの?」いきなり、名前呼びだ、旧友に出会ったような気分だ。
「頭ひとつユノがリードしてるけど、チャミ様も愛しています」と私が誇らしげに宣言すると
「蘭子は逆です。ユノオッパも大好きですけど、チャンミン様を崇拝しております」と負けじと蘭子ちゃんも胸をはった。
「どっちにしてもしゅてきよね。二人とも」「はい、おばさま異論ありません」と二人で潤んだ瞳で正面に貼られたポスターに見入る。いつの間にか手もつないでいる。すでにもう心の友だ。
「会社内ではあまりトンペンであることおおぴらには出来ないんです。他のアーチストの方との絡みもありますし…」
寂しげに蘭子ちゃんは言った。
「そうね。でも逢えたりするんでしょ?」羨ましいーというように私は聞いた。
「それがおばさま…蘭子ずっと大阪で…まだコンサート以外でお会いしたことないんです」涙目で蘭子ちゃんは答えた。
「へぇ~エイベックスに入社したら、絶対に会えると思ったけど、そうでもないんだね。残念だねー」と口では言ったものの、こんな可愛い子を二人には合わせたくないな、と思ってしまう。いくつになっても消えることのない醜い嫉妬という、女のサガというものだろうか。とりあえず、顔では気の毒だね、というような表情を保ちながら、じゃあこれで。と帰ろうとする私を蘭子ちゃんは再度引き留めた。
「すみません。余計な話で引き留めてしまって。もうしばらくこちらでお待ちください」と手をつないだまま、奥に入っていく。応接室と書かれた部屋に通され、ふんわりと上等そうなソファに座らされた。
「おばさま、すぐに調べますからほんとにあと少しお待ちください。申し訳ありません」深々とお辞儀をして、蘭子ちゃんは出て行った。
 蘭子ちゃんが出て行ってすぐ入れ替わりに、これまた可愛い女の子がお盆に何やら乗せて入ってきた。思い切ってここまであの書類持ってきて良かった。VIP待遇だわ。
「お待たせして、申し訳ございません。今竹ノ内が持ち主調べて、所在確認しておりますので、今しばらくお待ちください。これ、お口にあいますかどうか… 堂島ロールです。よろしかったらどうぞお召し上がりください」
うわ~堂島ロールだぁーと思わず叫んでしまう。
「私まだ一度しか食べた事ないんですけど、ほんとに美味しくて、いつも食べたいなーって思い出すんですよ。並ばなきゃ買えないし、駅からちょっと遠いしで…うわぁー嬉しい~頂いていいですか?」小さい子供のようにケーキに飛びつく。 「もちろんです。どうぞ」
「やっぱりおいしい~~~。このたっぷりのクリーム。フワフワの生地。最高です!!これチャンミンも大好きですよね」食べながら同意を求めるように見上げた。
「あ、お客様はビギストの方でしたか?これはこれは失礼いたしました」一歩さがって、お辞儀をする。
「いえ、何の失礼もなかったですよ。逆にこんなにまでしていただいて落し物届けただけなのに」返って恐縮してしまう。
「もうほんとに渡してもらうだけでいいですから。私そろそろ帰らないと。会社で怒られちゃいます」
超ベテランで社長にも怖がられている私は怒られるなんていう事は一度もないが、ユノもいなさそうだし(当り前だが)堂島ロールも食べられたし、そろそろ飽きてきたしで立ち上がって帰ろうとした。
ちょうどその時蘭子ちゃんが扉をバーンと開け、すみません!!とハーハーと肩で息をし、お待たせしました。書類の持ち主と連絡が付きました。と言いながら応接室にある電話をとり、私に渡した。
「もしもし?」「ありがとうございます!!!どこのどなたかは存じませんがあなた様は命の恩人です!」



4、



「そうなんですか?命まで?そんな大切な物のようには思われない扱いでしたよ。
電車に乗ってきたときから、書類落ちそうでしたよ…」ズケズケ言うのは大阪のおばちゃんの特徴か。
「そ…そ… そうなんですか?私寝坊しちゃって…慌ててて」可哀想にしどろもどろだ。
「ええ…そうだと思いました。髪の毛ハネハネでしたものね」別に恨みがあるわけではない。
「お恥ずかしいです。あの書類、実は社運がかかった案件の重要書類なんです」急にキャリアウーマン風な口調になった。
「あゆがやめるとか?」思いつきを口にする。
「え?やめるんですか? ち…違います!違います!今辞めるのかと思ってびっくりしちゃいましたよ。いえ、実はKARAを… あ!!ダメですよ。こんな大事な事言いそうでした」
「へぇ~~KARAを引き抜くんですか?少女時代じゃなくて??」井戸端会議風に聞いてみた。
「すみません!すみません!聞かなかった事にしてください」もう遅い。
この人かなりのおっちょこちょいだなぁ~、そんな大切な事見ず知らずの電話の相手に漏らしちゃって。
「誰にもいいませんよ」3日くらいはね。心の中で舌を出す。
「重ね重ねありがとうございます。失礼ですがお名前は?」
「鈴木あみです」「エイベックス所属の?」かぶせ気味にビックリしたようにドジ子さんは聞いた。
「まさか!同姓同名のただのおばさんです」そう聞かれるのには慣れている。
「そうですか…鈴木あみさんほんとにありがとうございました。それでお礼をさせて頂きたいのですが、
さっき受付の竹ノ内から聞いたところによりますと、ビギストの方だとか…?」

ドッキーーン!!心臓の鼓動が脈打ち出した。
いいぞ!いいぞ!なんか良い展開になってきたぞ!逢わせてくれるのか?ユノに?ダーリンに??
キャー でも無理。こんなおばさん、逢えないわ。恥ずかしくて、死んじゃう。
「あみさん、ありがとごじぇーました。なんか会社を救ってくださったとか。ぽくからもお礼いいます」
爽やかに手を出し、笑顔で握手、そして軽くハグ……
 な~~んてことになったら、どうしよう???

「もしもし!!もしもし!!」大きな声でドジ子さんが叫んでいる。
「あ、ごめんなさい。頭がユノのとこへ飛んで行ってました。はい!生粋のトンペンです。
正真正銘、どっぷり、ずっぽり、間違いなくユノ命です!」背筋を伸ばして答える。
「急ですが、今日か明日のコンサートのチケットはお持ちですか?」
「明日のはとれたんですが、今日のは外れたんです」あの時の悔しい気持ちがよみがえり、胸がざわついた。
「では、今日のコンサート行かれますか?」


ドーーーン!ダンダンダダンダダンダンダン   ダンダンダダンダダンダンダン
らいめいをとどろかしぇ、こしたんたんとねらって、せいじゅつがうりでも、やるときゃやるでしょ
ごちそういっただくなら、いちゅだって、ねったいやぁ~~ねったいやぁ~~

やるときゃやるのよ。ユノも。
白神起姿で右手をカッコよく上げ、ドヤ顔するユノの神降臨姿がすぐさま頭に浮かんだ。

「行きます!行きます!行きます!行きます!行きます!行きます!行きます!……」泣き叫ぶ
「あみさん!わかりました。わかりましたから。落ち着いてください!!」
「ハァハァハァハァ」過呼吸だ。立場はすっかり逆転している。
「ありがとうございます!ありがとうございます!なんとお礼を言っていいのやら」
涙と鼻水でドロドロだ。ついには膝の力が抜け、崩れ落ちてしまった。
「あみおばさま、大丈夫ですか?ほんとに良かったですね。蘭子おばさまのお気持ち痛いほどわかります。
今日は蘭子もビギ枠で当たっているのですよ。ほんとに良かったです」
「あ~蘭子ちゃん」二人に逢わせたくない!なんて思った小さい心の私を許してちょうだい。あなたがドジ子さんに
トンペンだって言ってくれたおかげで、こんな素晴らしいプレゼントがいただけて。
口には出さずに蘭子ちゃんをギューっと抱きしめた。
ストロベリーの香りにクラクラする。ユノキュラのように首筋をガブリとやってしまいたい衝動を必死で抑えた。
「蘭子ちゃん、このストロベリーの香りはどこの?」
「あら、おばさまMISSHAのですわ」ちょっとまってくださいね。と言って応接室から出て行った。
それにしても、ほんとに嬉しい。今日もまたあの感動のステージを見れるのね!!なんて幸せ。とうっとり
幸せに浸っていると、蘭子ちゃんが可愛い小瓶を持って戻ってきた。
「おばさま、これ私からのプレゼントです。今日はこれだけしかなかったんですけど」ほら。と小瓶を目の前に持って液体を見せてくれた。
「ユノオッパの大好きないちごですよ。今日おばさまこれつけて、コンサートに行ってくださいね。ユノオッパが香り嗅ぎ付けて、いちご~いちご~いちご食べたーいって来てくれますよ」
「ありがとう!蘭子ちゃん。なんていい子」もう一度抱きしめた。おやじなら完璧にセクハラだ。

 私が泣き崩れている間にもう一人のカワイコちゃんが色々段取りをつけて、話をまとめてくれていた。
「おばさま、落ち着きまして?」フワフワのソファに蘭子ちゃんと二人で座り、もう一度堂島ロールをほおばった。
「うん、ありがとう。蘭子ちゃん。本当に幸せよ。スタッフ席だなんて、ユノとチャミの汗も飛んでくるかしら?
ユノにタオル投げたりする人の近くの席かしら?」口いっぱいに堂島ロールをほおばり、聞いた。
「蘭子もスタッフ席がどこだかは知らないんですけど…でもおばさまは会社を助けた方なんですから、柱の陰に座らすなんて、いくらせこいエイベックスでもしないと思いますよ。神席だといいですね」
 静かな応接室の中で蘭子ちゃんと私はすっかり仕事の事など忘れ、ユノとチャンミンの話で盛り上がっていた。
ふと時計を見ると、もう11時前だ。
「大変!蘭子ちゃん!!私帰らなきゃ!コンサートに行く準備もしなきゃいけないし。名残惜しいわー。
またメールしてね。また、どこかでお茶でもしようね!!」アドレス交換もすでに終わっている。
「はい、おばさま。蘭子もとっても楽しかったです。久しぶりにこんなに盛り上がりました。また是非逢ってくださいね」
では、これお土産です。と蘭子ちゃんが手渡してくれたエイベックスのロゴ入り紙袋の中には大量のトングッズが入っていた。わぁー買えなかった、ミニチュアトラックもある~。感激~。
もうこの際遠慮なんてするのやめよう。
素直にありがとう。と頭を下げた。
 会社から出て、外まで見送ってくれた蘭子ちゃんは可愛い笑顔で
「おばさま、今日の1日が良い日でありますように!」例のフレーズを言いながら手を振った。


5、

私のお節介が初めて実を結んだ記念すべき日だわ。
知らん顔しなくて、良かった。
今までお節介してもろくに感謝された事なんてなかったけど、今日はこんなに役にたてて…
しかもお礼が今日のチケットだなんて。
あ~神様ユノ様仏様。感謝いたします。
両手の重い荷物を腕にぶら下げたまま、両手の指をくんで天をあおいだ。
御堂筋沿いを行き交う人々が不思議そうな顔をして見ているが
そんな事は全く気にならない。
逆に一人ひとりに握手して回りたいくらいだ。
「私、またユノに逢えるんです!!!」

 さ、早く帰ってコンサートに行く準備しなきゃ!
何か忘れているような気がするけど… 気にしない。きにしない。
 能天気お気楽天然な私の頭からはすっかり仕事という文字は消えていた。

 心斎橋駅のホームに向かう階段を降りると、何やら普通の乗客とは違う人たちが大勢いて
ナンバとは違い少し小さい改札口が混雑していた。
 何だろ?どうしたんだろ? とキョロキョロしながら、ICOKAをピッ!とした瞬間
くすだまがパーンと割れ、どこから現れたのか、吹奏楽団のパンパンカパーンというラッパの音が
地下の構内に異様に響いた。
 何?何?どうした?
「おめでとうございます!大阪市地下鉄開通後5000万人目のご乗車です!!」
え~~~???地下鉄ってどんだけの駅あるのよ!
よりによって、ここ??心斎橋? ナンバでも梅田でもなくて?とびっくりしながら
立ち止まっていると、落ちてきた風船と同じようなお腹をした
見るからに、おれは偉いぞ!風な駅員さんがドシドシと近寄ってきて、手を差し出した。
「ありがとうございます!ほんの何秒かのタッチの差で阿波座ではなくて、わが心斎橋駅が
この栄誉を勝ち取りました!すべてはあなた様の素早い、ピッ!のおかげでございます」
「はぁ~いつもしっぺでは叩かれてたんですがね~」
「これで、梅田やナンバの奴らにいつもいつも偉そうにされてきましたが、見返すことが出来ます!」
「こんな事で?同じ地下鉄内でも格差があるんですね。でも心斎橋はメジャーな方じゃないですか?」
「Aクラスではあるんですが上位3駅からはだいぶ離されてます」
口惜しげに風船腹は言った。
「どこの世界も厳しいんですね。お役にたてて、何よりです。では、これで」
と、お愛想もそこそこに立ち去ろうとした私の荷物を引っ張り、風船腹は
「そういう訳にはいきません。証拠写真を撮らせて頂きます」
「はぁ~???私急いでるんですけど、ユノと待ち合わせしているんです!」
「おい!こっちだ!早く早く、カメラマン早くしろ!」
私の言葉を無視して、下っ端駅員達に指示を出す。
「花束はどこだ?大きいの用意したのか!?梅田の奴らにバカにされるようなのじゃ駄目だぞ。
よしよし、それくらいなら大丈夫だな。記念品もあるのか?カメラマン!どこ行ったんだよ!
肝心な時にいないんだから!」
私の事など、全く無視して、風船腹は偉そうに叫ぶ。
「いい加減にしてください!私はユノに逢いに行かなきゃいけないんです!」
風船腹の胸ぐらをつかんでやろうとして、首がないのに驚いて飛びのいた。
「申し訳ありませんでした。準備できましたので。
では、はい目線あちらでお願いします。花束贈呈の瞬間を…  はい、バター」
死語よりもっと酷い。
「こちら、記念品といたしまして、1年間有効フリーパス乗車券です。どうぞご利用ください。
では、今日1日良い日でありますように。いってらっしゃいませ。」
風船腹は指さし確認しながら、駅長室に消えていった。
まったく、1年間のフリーパスはありがたいけど、余計な時間かかっちゃったわ。
早く帰ってうちわ作って、シャワー浴びて、綺麗にしてから、蘭子ちゃんにもらった
ストロベリーつけなきゃ!少しにしておかないとね。ユノに食べられたら困るしね(困らない、困らない。と
自分自身でつっこんだ)つり革を持った手が笑いで震えた。
 
 この前うちわの材料買ったとこは少なかったなー。ちょっとロフトに寄っていこ~。
梅田で降りて、相変わらずどこから湧いてくるのかと思うくらいの人混みに、
流されるようにロフトに向かった。
 どんなうちわにしようかなぁ~。ハングルがいいかしら?それともシンプルにLOVE ユノ
キャー恥ずかしい。
歩きながら、にやける。にやけた瞬間にすれ違う人たちがなぜか私を見て、微笑みながらかすかだが
通りやすいように道を開けてくれているように感じた。
 まさかね、そんなはずはないわよね。大阪一番の繁華街でせっかちで気の短い人が多いのに
ありえん。ありえん。いくら楽天的だからって、そこまで都合のいいように考えちゃだめよね。
 スタッフ席ってどこだろ?サムさんの隣かしら?そんな訳ないよね。
タオル投げる係りやりたいなぁ。
 そんな事を考えながら、うちわグッズを購入し、やっと、あれ?仕事は?と思い出した。
私は職場に電話をかけた。
「すみません、倒れたおばあさんん気に入られて、お家にお邪魔してます。遺産もらえるかもしれないので、
今日は休んでここにいます」
 妄想にもほどがある。が、信じる方も信じる方だ。
3・2・1と秒読みする信号機のある横断歩道で青に変わる瞬間を見逃してはならん!と信号を凝視していると
後ろから「すみません。お急ぎのところ申し訳ありません」
上半身つんのめって、今にも一歩踏み出そうとする体勢の私の肩をノンスタイルの井上のような変な髪型をした
青年が叩いた。
急いでるのわかるんなら、止めるなよ! イライラしながら半分だけ振り向いた。
はい? 何か? 明らかに怒っている。
「僕、美容師なんですけど、ちょうど奥様くらいの年代でこのくらいの髪の長さの方を探していたんです。
こんなにすぐに見つかって、ラッキーです」
「私まだ、OKしてないけど?」
「奥様そんな事おっしゃらずに、どうか僕を助けると思って…」
変な髪型だが、よく見るとクリッとしたお目目が可愛い青年だ。
心が揺らぐ51歳。いくつになっても可愛い子には弱い。


6、

 う~ん、どうしようかなー
お役にたって、あげたいけどね。
私ほんとに時間なくて。
18時からユノとデートで17時に蘭子ちゃんと待ち合わせてて、その前に家帰って、うちわ作って、
バカ共のご飯作って(これは最悪弁当でもいいんだけどね)、シャワーあびて、スロトベリーつけて…
ごめん。やっぱ、どう考えても無理だわ。
ごめんね。他あたって。じゃ!
 そう断って行こうとする私の前に回り、可愛い顔の青年は(すでにお気に入り登録済)
両手を広げて、私をとめた。
 素敵~。こんな事して止められるシチュエーション見るの
「僕は死にましぇん!」の武田鉄也のドラマ以来だわ。
「やっと、見つけた僕のシンデレラ、あなたしかこの靴は入りません」
 シンデレラ??キョロキョロ周りを見渡す。
シンデレラいるの?どこに?ドラマの撮影?
梅田のど真ん中、それらしき撮影隊は見つけられない。
「興奮してしまいました。すみません奥様。諸事情了解しました。すべてこちらで何とかします。
ですので、後は僕に任せてください」キラキラした目で私を見つめている。
 どうしたんだろ?この子可愛い顔してんのに、今流行りの熟女好き?もったいないわねぇ~
「そう言ってくれるのはありがたいけど、現実問題無理よ」
「為せば成る!為さねばならぬ何事も」
そう言うが早いか私の大量の荷物を奪い取り、片手で軽々と持ち、もう一方の手で
私の手をつかんだ。
「行きましょう!」
な…な…なんかいい感じ… こんな男の子に強引に手引かれて、グイグイリードされる感じ
何万年ぶりかしら? 頭の中の考えにもボケてしまう悪いくせ。
いきてねーよ。  突込みはお早めに。
 随分前にユノがJJの手引っ張って歩いてる写真あったなー。
さすがにチャミとはそんな事しないなぁ。
したらいいのに。
…やめろ!って言いそうだな。チャミ
いや、逆にチャミが早く!ヒョン!って引っ張るか??
ムフフ…それもありだな。
 いつでもどこでも東方神起。の便利な脳みそを持つ私はこんな時でも二人の事を思いながら、
息子と同じくらいの若い青年に手を引かれて、よぼついた母親のように歩いていた。
人混みをかき分けかき分け…でもなくまるでレッドカーペットを歩く、ハリウッドスターのように
なぜか、二人の前から人が消えていた。
「さぁ~どうぞこれに乗ってください」
カッコいい~~!!
♪緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ♪
「すみません、強引な事しちゃって…僕普段はこんな事できるような性格じゃないんですけど。
なんか今日はいつもと違う自分です。あ、花形満といいます。失礼ですが奥様のお名前は?」
「星 飛馬です」
「へ??」
「いえ、冗談ですよ」
ワッハッハッハ 笑うとえくぼが出来て、またまた可愛い。




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